最初は、ただの退屈しのぎやった。 妻がいない夜、静まり返った部屋。 でも玄関を開けた瞬間、空気の温度が変わったんや。 彼女の髪がゆらりと揺れて、微かに甘い香りが流れた。 「寂しいの、わたしだけじゃないでしょ？」 その一言で、胸の奥がじわっと熱くなった。 喉の奥がカラカラになるほど、時間がゆっくり溶けていった。
息が触れ合う距離って、なんでこんなにずるいんやろ。
「お姉ちゃんより、わたしの方が素直やと思わない？」 そんな囁きが、鼓膜をなぞる。 ドクン、ドクンって心臓が返事してるみたい。 視線が絡むたび、背中が熱を帯びていく。 汗がつうっと首筋を伝う感覚が、やけにリアルで。 呼吸が乱れて、身体が言葉より先に嘘をつく。 あかんと思いながら、逃げられへん。
焦らされる時間が、いちばん長くて甘い。
彼女の動きがゆっくりで、わざと間を作ってくる。 空気の「間」に感情が染み込んでいくのが分かる。 たった数秒なのに、永遠みたいな沈黙。 息を呑むたびに、体温がひとつ上がる。 唇が触れたのか触れてないのか、その曖昧さがずるい。 「ねぇ、これってダメなことなんかな」って、 小さな声で笑う彼女の目が、もう全部知ってた。
何度も、何度も、重なるたびに現実が遠のく。
朝焼けの光がカーテンの隙間から差し込んで、 その中で彼女の肩が小刻みに震えてた。 鼓動と鼓動が重なって、世界が静止する瞬間。 心が空っぽになるのに、満たされていく。 「もう帰りたくない」 その言葉が残響みたいに部屋に広がって、 現実よりも甘い嘘に変わった。
終わったのに、まだ終わってない。
画面が暗くなっても、熱だけが残ってた。 指先がまだ覚えてる。あの柔らかさも、あの呼吸も。 理性は遠くで手を振ってたけど、心はもう戻れへん。 二度と会えないとしても、あの瞬間だけは永遠やった。 「妻より先に出会ってたら…」 そんな後悔さえ、心地よく感じるくらい、夢みたいな時間。
まとめ：罪よりも、記憶の方が甘かった。
- 目と目が合った瞬間、全てが始まってた。
- 焦らしの呼吸が、言葉より雄弁。
- 触れそうで触れない距離が、一番危険。
- 心の渇きを埋めるような、禁断の癒し。
- 終わった後に残るのは、後悔じゃなく余韻。
もし今、ひとりの夜を埋めたくなるなら。 この作品は、ただの映像以上の“逃げ場所”になるかもしれん。
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