白いシーツがまだ温もりを残している部屋。 ドアが閉まる音が、やけにゆっくり耳に届く。 その視線がまっすぐ差し込んでくるたび、胸の奥で「どくん」と跳ねる音が自分の鼓動だと気づく。
髪の先が肩をかすめるたび、かすかな香りがゆらりと漂う。 指先がカップの縁をなぞる動きでさえ、見てはいけない何かを見てしまったように息が詰まる。 瞬きすら惜しくて、ただその動きを追いかけてしまう。
一歩近づくだけで、空気が変わる。
足音は柔らかいのに、背筋をなぞるような気配が近づいてくる。 「す…」と吐かれた息が頬をかすめ、体温が一気に上がる。
触れてはいないのに、全身が「もう限界」と訴えてくる。
看護師としての柔らかい笑顔と、奥底に潜む秘密の顔。 昼と夜が一瞬で入れ替わるその変化に、心も体も追いつけない。 手元のコーヒーは冷めきっていた。
理性を削るのは、行為ではなく間。
唇が開きかけて閉じる、その間。 瞳が泳いで戻る、その間。 ほんの数秒の沈黙が、胸の奥を「じわ…」と締めつける。
義兄との秘密を抱えたまま、彼女は笑う。 笑顔の裏で流れる汗が、鎖骨をなぞって胸の谷間へ消える。 それだけで、もう言葉はいらなかった。
まるごと飲み込まれる感覚。
抱かれているのではなく、存在ごと包まれている。 視線に、仕草に、呼吸に、すべてが侵食されていく。 だからこそ、この瞬間はただの行為ではなく、帰れない場所になってしまった。
▼ 瞳が仕掛ける、逃げられない夜。
この作品は、本田瞳の二つの顔を完全収録。 義兄との禁断と、患者に奪われる夜。 どちらも、理性を溶かす湿度と間が支配する時間。 観る者の呼吸まで奪っていく。
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